星とダイヤモンド

ももいろクローバーZさんの曲について語るブログ

天国のでたらめ

ヤバイ曲がきた

 

あの日描いた夢を仮に(A)として

この未来を(B)とする

神様がいるなら この(A)と(B)とを

イコールにしてお願い

 

足して 引いた 欠けた 割れた

何度も確かめた答えだ

「まちがい」なんて言わせない

きみがぼくを見つけてくれたこと

 

生まれ変わっても 分かるよう

ぼくを 思い出せるように

嫌になるほど 見つめてね

忘れないでね ずっと

 

きみとぼくの距離を(C)と(D)として

イコールじゃ平行線

今でも踊れるさ あのエイトビート

ぼくらをまた近づけて

 

書いて 消して 芯も 折れて

まだ答えが出なくて

破れそうな答案用紙に

それでも証明するから

きみと見た夢を

 

生まれ変わっても 分かるよう

ぼくを 思い出せるように

いやになるほど 見つめてね

忘れないでね

 

踊るきみの姿のすべてを

笑う顔も 口癖も

覚えて生まれ変わるから

来世もよろしく ずっと

 

ねえ 名前なんだっけ

どこで会ったっけ

いつのことだっけ

なにをしてたっけ

どんな顔だっけ

どんな声だっけ

どんな人だっけ

どこが好きだっけ

 

忘れないように

忘れないように

明日も会おうね

約束しようね

生まれ変わっても

生まれ変わっても

変わらないでいて

見つけてあげるね

 

ヤバイ曲がきた。

ちなみにミュージカルは未見です(卒論に追われて別の意味でヤバイので)

しかしあらすじは見ました。ももクロのこれまでを踏襲しながら、幕が上がるの世界ともクロスオーバーした生と死の間の夢のお話。

でもいかんせん観てないので何も言えない。

なので曲だけの感想なのですが

 

これまでのももクロ曲の中でも、完成度が桁違いなのでは。

レーベルメイトでもある志磨くん、いつか曲を書いてくれるとは思ってましたが、こんな可愛くて切なくて哀しい曲なんて誰が想像するよ。やべえよアンタ、アンタ...

 

あの日描いた夢を仮に(A)として
この未来を(B)とする
神様がいるなら この(A)と(B)とを
イコールにしてお願い

 

数学になぞらえて始まるささやかなお願い。

わたしたちが描く夢なんてあくまで未来の仮の姿でしかなく、ほんものの未来なんてあまりにも不確定で曖昧なものなのだ。答えなどない。

でもきみとぼくが出会ったこの運命、「まちがい」なんて言わせないように。いやな予感を打ち消すように。

次のフレーズでは、そんな答えのない未来というものに必死で答えを見出そうとしている。

足して 引いた 欠けた 割れた
何度も確かめた答えだ
「まちがい」なんて言わせない
きみがぼくを見つけてくれたこと

 

足して、引いて、欠けて、割れて。傷ついても、答えを手にするために何度も、何度も、きみと夢を見よう。

それにしても言葉遊びが凄まじい。「(A)と(B)と」と「エイトビート」を掛けたり、「イコール」を“同じ”ものとしての意味と“変わらない”ものとしての意味で2回登場させたり。

 

 

サビでは可愛いアイドルの恋愛ソングの形を見せながらも、後半に入るにつれ様子が違ってくる。

書いて 消して 芯も 折れて
まだ答えが出なくて
破れそうな答案用紙に
それでも証明するから
きみと見た夢を

 

「それでも証明するから きみと見た夢を」。さっきまで飛び跳ねて笑顔で踊っているきみが、ふと真剣なまなざしで、ぼくを見ている。そんな様子が想像できるような、少し静かになるバックの音。

 

踊るきみの姿のすべてを
笑う顔も 口癖も
覚えて生まれ変わるから
来世もよろしく ずっと

 

「来世もよろしく」。ここで、続いていた夢がふっと途絶えるように、さっきまでの音楽が消える。きみがふっと消えた、そんなような。

そして流れる少し哀しいメロディー。

もうきみのことを忘れかけていくぼく。

でもきみを好きだったことは覚えている。

それに抗うように畳みかけていく言葉。

忘れないように
忘れないように
明日も会おうね
約束しようね
生まれ変わっても
生まれ変わっても
変わらないでいて
見つけてあげるね

それにしてもなんだかおかしい詞だとここで気づく。(遅い?)
「忘れないでね」と「忘れないように」という二つの言葉。明らかに対になっているバ最後のバラードパート。
ずっと一人の子が歌っているように思っていたけど、もしかして、『きみ』と『ぼく』の二人の会話形式になっているのかな。しかしおそらく二人とも同じように『きみ』と『ぼく』の代名詞を使っているので、かなりわかりにくくなっている。

最初からフレーズごとに分けていくと、二人の人物が会話する歌詞にも取れるようになっていることがわかる。

何度も言うようで申し訳ないのだけど、私はミュージカルを観ていないので曲から読み取ることしか言えない。この二人が誰で、ということは曲からは読み取れないので、このままいきます。

最初のフレーズから見ていくと...

フレーズ1「あの日~」:神様にお願いをしている『〇〇』。

フレーズ2「足して~」:必死に抗おうとしている『△△』。

フレーズ3「生まれ~」:語りかけ、別れを告げる『〇〇』。

フレーズ4「きみと~」:きみに近づこうとする『△△』。

フレーズ5「書いて~」:それでもなお諦めない『△△』。

フレーズ6「生まれ~」:別れを繰り返す『〇〇』。

フレーズ7「踊る~」:最後の言葉を告げる『〇〇』。

~バラード~

フレーズ8「ねえ 名前~」:もう忘れかけ、天国に行こうとする『〇〇』。

フレーズ9「忘れないように~」:天国に行こうとする〇〇を見送る『△△』。

 

ここで私は「天国に行く『〇〇』」「見送る『△△』」に仮定して分けましたが、前半では結構はっきりしてる二人の心境の違いが、歌詞後半になると、この二人を分かつはっきりとした違いがなくなっていく。特に2番サビのフレーズ6からは、どっちがどっちか分からない。

 

そもそも『天国のでたらめ』というタイトルではあるものの、歌詞には天国なんて言葉出てこない。

これは純粋な「死」による別れの曲にも聞こえる。「死」というものは本当にどうにもならないもので、不可逆で、全ての喪失につながる。もちろん記憶も。

「人は2度死ぬ。1度目は魂が肉体を離れた時。2度目は人から忘れられた時だ」というおなじみの映画のセリフもあるほどに、人と人のつながりは、あやふやで曖昧な記憶にたよらないといけない、それほどにもろい。

でもフレーズ8の「ねえ、名前~」の部分は、相手のことは忘れてしまったけど、相手が自分にとってとてもとてもだいじなひとだったってことは覚えている。れにちゃんが歌う最後の言葉、「どこが好きだっけ」は、ここだけつぶやくように歌われているのがものすごく哀しい、救いの言葉だ。

『きみ』は『ぼく』で、『ぼく』は『きみ』で、お互いに大切で、それこそが愛だった。

 

 

つくづく思うのだけど、いつもももクロちゃんは恋愛も友愛も自愛も慈愛も全部ひっくるめた「愛」についての歌を歌っていて、そこからずっとぶれない。

 

あやふやで曖昧だからこそ、ずっとずっと歌い続けて、私たちが忘れないように歌ってくれているのかもしれない。

そう思ったらまた泣けてきた。ごめんな重くて...

 

忘れないでね。忘れないように。

きみを想う気持ちを。

 

 

天国のでたらめ

天国のでたらめ

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